安西水丸と和田誠。二人とも私が大好きなイラストレータだ。以前、二人の共著である『NO IDEA』という本をたまたま見つけて買った。その時に初めて、この二人が親しい仲なのだと知った。
安西水丸は2014年、和田誠は2019年に亡くなってしまった。もう二人の新しい絵や文を見ることができないのだと思うと寂しい。ファンというほど熱心な読者ではなかったけれど。
近くの古本屋に寄ったら「青豆とうふ」という文庫本を見つけたので買ってきた。二人が交互に絵と文を描いたエッセイ集。「ショーン・コネリーのはげ頭」の話題から始まって、お題をつなげていく形式。「まえがき」で和田誠が「打ち合わせなしなので話の展開の先が読めず、事前準備ができない、相手の文章を読んで、挿絵を描きながら、次に自分が書くことを考えた」といったことを書いている。二人が気の向くままに「そういえばさ…」と雑談をしているような一冊。それでいて、読んでおもしろく見て楽しいのだから、すごい。
( 私が買ったのは下の新潮文庫の方。現在は中公文庫版が流通しているようです。)
「青豆とうふ」というタイトルは村上春樹がつけたそうだ。安西水丸と二人で居酒屋で飲んでいた時に、タイトルを考えて欲しいと言われ、そのときちょうど食べていたつまみが「青豆とうふ」だったので、そうしたという話。
村上春樹の「『青豆とうふ』文庫版のおまけ」という小文が巻末に収録されている。年に一度、和田&安西の二人展が南青山の小さな画廊で開かれていたことに触れ「僕もワインを一本持参してオープニングにうかがい、そこで絵を拝見しながら楽しくお酒を飲み、あれこれ世間話をし、気に入った絵を買わせていただくというのを、ささやかな習慣にしています。」なんかちょっとだけ(ほんのちょっとだけ)イラッとしてしまった。ハイソな生活への嫉妬、嫉みかなあ……心の余裕を失っちゃいけませんね、反省します。
村上春樹が苦手(短編は好き)な私だが、彼の本を彩るイラストレータには好きな人が多い。この本、買ってみようかなと思うくらい。そういえば、 大橋歩が以前出していた「arne(アルネ)」という雑誌で「安西水丸さんがおしゃれなので私服を見せてもらった」的な特集があった。たしかにおしゃれで、「妙齢のスチュワーデスばかりのファンクラブがあった」と本人が『青豆とうふ』で書いているのも納得。いろいろとファッションにはこだわりがあるようで「マオカラーのシャツが苦手」「文化人と呼ばれている人々のそれはどこかクサイ」(『青豆とうふ』より)と書いてるのも笑った。