(読書日記はネタバレは全く気にせず書いています。ご注意ください)
今年、エリック・カールが亡くなって、『Flora and Tiger 19 very short stories from my life』という本のことを思い出した。作者自身が体験したことを、思い出すままに書き留めたエッセイ集だ。動物や昆虫、友人や家族が登場する十九篇の短いエッセイが収められている。
いつこれを買ったのか覚えていないほど昔から持っている。平易な文章なので辞書を引けば読めるはずだが、なんとなくおっくうでそのままになっていた。今回読まなければ、もう読み終えることはなさそうな気がしたので、新しく日本語版も買って、不明な点をすぐに解決できるようにしたうえで読むことにした。
題名になっている「Flora and Tiger」は、亀のフローラと猫のタイガーの話。父方の祖母と共にニューヨークからドイツへ旅してきた亀のフローラ。ドイツにある祖父母宅の広い庭で飼われることになる。そこはアンゴラ種の猫、タイガーの家でもあった。フローラとタイガーは仲良しに。でもある秋のこと、祖母がフローラを冬眠させようと探しても見つからない。翌春、祖父が庭を掘り返しているとフローラが寒さに耐えかねて死んでいるのが見つかった……こうやってまとめると暗い話のようだが、淡々とした筆致なので読後感は悪くない。
知らない単語やうろ覚えの単語を紙に書き出しながら読んでいったら「grub 幼虫/地虫 centipede むかで larva 幼生 weasel イタチ chipmunk シマリス hornet スズメバチ sapling若木 ledge 岩棚 sycamore アメリカスズカケノキ/プラタナス hemlock 毒ニンジン/毒ゼリ」など、生き物や自然に関する単語が数多く並んだ。
豊かな自然の中で、生き物を愛する家族と共に過ごした日々が、細やかに描かれている。一日に一篇、二篇と読んでいったが、そうやって少しずつ味わいながら読むのにちょうどよい本だった。
作者は、このエッセイ集を「年長向けの本を」「realな本を」という声に励まされて書いたと言っている。上に紹介した「Flora and Tiger」もそうだが、死や別れがさらっと書かれているし、特別なオチがない話も多い。幼い人よりも大人の方が、読んで感慨深い本だと思う。
出来が悪い学生だったので、大学の授業で英語のテキストが決まると、まずは本屋で翻訳本を探したものだ。ところが、(ここはどう訳すんだろう)と思う箇所に限って、訳本を見ても納得できる訳になっておらず悩むことが多かった。今回は単位がかかっているわけでもないし、逐一付き合わせたわけでもないので、たまに(あれ?)と思うことはあっても、それほど悩まず楽しく読めた。ゆあさふみえさんの訳は読みやすかった。
子供が小さい頃、「はらぺこあおむし」のビデオを買って何度も見た。色鮮やかで楽しくて、本当に大好きだった。