十代のころ、小さな手帳をいつも持ち歩いていました。思いついたこと、試験の結果、好きな文章などなどを書き留めたり、本の紹介やおもしろい記事の切り抜きを貼ったりしたもの。大人になって読み返してみたら恥ずかしくてたまらず、いつだったか捨ててしまいました。読み返したりせずに取っておけばよかった。今なら懐かしく眺められたのに。
当時、書き留めていて、いまでも覚えている漢詩があります。
戯題新栽薔薇 白居易
移根易地莫憔悴
野外庭前一種春
少府無妻春寂寞
花開将爾当夫人
たしか、新聞連載小説に引用されていて知りました。当時の私にとって白居易は白髭のおじいさんだったので、この詩も「おじいさんが作った詩」だと思ってました。とにかく、この詩の情景が好きで、辛い時などに良く思い出していました。(こんなおじいさんが近くにいてくれたらなあ)(私が美少女だったら遊びに行って仲良くなるのに)とか変な妄想をして心を慰めていました。
私の父は知的には問題ないけれど(どっちかといえば学力は高い)情緒的には子供のような人でした。亡くなって10年が経ちますが、今でも父に対しては複雑な気持ちを抱いています。そのせいか若いころは、「自分を優しく愛してくれる父」的存在に強い憧れがありました。この詩に惹かれたのも、そういう憧れがあったからだろうなあと思います。この詩作当時の白居易はまだ30代半ばだったと知ったのは、自分がその年を超えた後でした。
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手帳は捨てたけれど、この詩のページだけは切り取って残していたはず、と探したけど出てきませんでした。残念。引用されていた新聞小説が何だったのかも思い出せません。「薔薇」という単語が入ってたと思うんですが。
*追記*
断言できませんが、当時読んだ新聞小説はこの本だと思います。安く入手できそうだし、もう一度読んでみようかな。