実家には猫がいる。元野良だ。庭に親子連れで来ていたのが、ある日子猫だけ置き去りになっていたらしい。「ご飯茶碗に入るくらい小さかった」と母は言うが、私はその頃を知らない。しばらくは庭に来た時に餌をやっていたようだ。飼わないのに餌をやるのはダメでしょと言ったら、いつの間にか手懐けて家の中で飼うようになっていた。その頃の写真がこれ。
黒い→チャコールということでチャコという名前になった。チャコは賢い猫で、トイレもいっぺんで覚えたそうだ。犬と違って散歩の必要もないし、日中、母の相手ができて良かったくらいに思っていた。その頃の母はまだしっかりしていたので。チャコの世話もきちんとしていたし、もう少し大きくなった頃に避妊手術も受けさせたと聞いた。猫がいると毛が散るねえと言いながらこまめに掃除や洗濯をしていた。
でも、今はかなりまずいことになっている。現在の母は家の中を箒で適当に掃くのみ。「それじゃチャコの毛や埃が移動してるだけだよ」と言っても、掃除機は「重たいしゴミを吸わなくて使えない」そうだ。軽いスティック掃除機に買いかえたが、使おうとしない。そのうち操作も覚束なくなった。同居している弟に掃除の習慣はない。
おかげで家の中が埃だらけだ。夏の間にホットカーペットのたぐいは全部どけた。手に取ってみるといっそう汚く、間近で見た弟が「買い換える」と言うので捨てた。これから寒くなったらどうしよう。新しく買ったとして管理できるんだろうか。
母は週一でデイサービスに行く。その度に実家に行き留守中に片付けをしている。家中掃除機をかけ、板の間はウェットシートで拭く。母の寝具を干し、シーツを洗う。そこらにかけてある母の衣類はどれが綺麗なのかわからないので適当に判断して洗濯する。チャコのトイレが汚れている事もあり掃除する。あまりにひどい時にはトイレを外で水洗いしている。ほんの少し改善…してるかなあ…。弟に、ダスキンとかに頼んで定期的に掃除して貰えば?と言っても「母さんが他人に頼むのを嫌がる」と言うし、とにかく二人とも現状に不満がないのだからどうしようもない。
母が窓を閉め忘れるので、チャコはよく外に脱走している。ダニやらノミやら持ち込まないかと心配していたが、案の定、母のシーツに黒い点状の糞が散らばっていた。弟に言うとさすがにダニ取りマットを敷いたり、薬剤を撒いたり、チャコにダニ取りの薬をつけたりはしたようだ。どうやら自宅に持ち帰ってしまったらしく、寝具が痒くて泣きたくなった。全部洗ってコインランドリーで乾燥させて、頻繁に風通しして掃除して…なんとかおさまったかな…まだ完全ではない気がする。神経質になりすぎてるのかもしれないけれど。
この頃は、ジャージ姿で実家に行き、掃除が終わったら、風呂場で手足を洗って着替え、脱いだ衣類はビニール袋に入れて持って帰っている。自宅に着いたら玄関で靴下を脱ぎ、そのまま風呂場に直行してシャワーを浴び衣類を洗濯。時には昼間から風呂に入ったりもする。
チャコを洗ったことはないらしい。弟が手酷く噛まれて懲りたそうだ。洗われたことがない猫も結構いるだろうが、せめてこまめにブラッシングして定期的にダニやノミの駆除薬をつけてやってほしい。それは弟に再三言ったので分かってくれたと思う。チャコは何も悪くない。きちんと世話や掃除をしない人間が悪い。でも、できない人に言っても仕方ない。どうしたもんか…。
猫を飼っている老人は多くて、ヘルパーをやっていた頃、何軒も訪問した。ヘルパーはペットの世話はできない(公費では)。掃除が覚束なくなった老人が、動物の世話をどうしているのか考えた事がなかった。
チャコは、私一人の時は愛想が悪くて近寄って来ず「私に構わないで」って顔をするくせに、母が居る時は「撫でてもいいよ?」と私にも寄ってくる。いまいち信用されてないのかな。
母はもともと掃除が苦手だったが、その代わりのように部屋の模様替えをしょっちゅうやっていた。そうすると結果的に家の中が片付くのだ。食器や小さな家具、カーテン、テーブルクロス、布などを買うのも好きだった。この写真を撮ってみて(そういえばこのテーブルクロス、相当前から破れてるな…)と思った。今度、母と買いに行ってみようか。
昔、仕事でゴミ屋敷の掃除をしたけど、ほんとに大変だった。相手の同意があって一度に片付けるわけではなかったので。少しずつ信頼関係を作り、なだめすかして一緒に片付けて「ちょっと物が多い家」レベルにするまでに週一回入って一年以上かかった。その後、どうなったかなあ…と時々思う。