元活字中毒主婦の身辺雑記

日常の細々したことなど。

私の好きなへんてこ絵本10選+3

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

 

同じ作家の絵本を複数選んでしまってバランスが悪い気がしたけど、どれも捨てがたかったので、作家3人(レオ・レオニ/トミー・アンゲラー/大道あや)の絵本を追加して作家を10人にしました。(2021.12.13追記)

 

娘が大学生だった頃、なにかの折に「そういえば、絵本ってへんな話ばっかりだな〜って思ってた」というので「ごめん。それお母さんの趣味。へんじゃない絵本の方が圧倒的に多いんじゃないかな」と答えると「えっ、そうなんだ〜」……小さい頃、そう思ってたという話ではなく、今も「絵本ってへん」な認識だったみたい。偏った趣味の母ですみません。

 

というわけで、私が好きなへんてこ絵本10選です。年寄りなので古い絵本が多いことは許してください。

 

1−1「ジョゼット ねむたい パパに おはなしを せがむ」

 ウージェーヌ・イヨネスコ作 谷川俊太郎訳 エチエンヌ・ドゥレセール絵

(英語版しかありませんでした。)

 

「ジョゼットは このよに うまれて さんじゅうさんかげつ、もう あかんぼうじゃない。」と始まります。ジョゼットのママとパパは、昨晩、人形芝居やレストランに出かけて疲れたので寝床でごろごろ。メイドが用意した朝食も食べません。ジョゼットはメイドと一緒に食事をすると、また寝室へ。昨晩うかれすぎてくたくたのママが眠っている間、パパがお話をしてくれます。

 

「あるとき ジャックリーヌという なまえの ちっちゃな おんなのこが いました。」ジャックリーヌのパパはムッシュウ・ジャックリーヌ、ママはマダム・ジャックリーヌ、妹2人の名前もジャックリーヌ、いとこも、おじさん、おばさんもみんなジャックリーヌで……。

 

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(お話にサイは登場しないけど、イヨネスコの「犀」へのオマージュ?)

 

とにかく不条理。特にオチなし。絵がどことなく怖い。読んでて頭がぐらぐらする。でもおもしろい。

 

1−2「ストーリー ナンバー 2 ジョゼット かべを あけて みみで あるく」

 ウージェーヌ・イヨネスコ作 谷川俊太郎訳 エチエンヌ・ドゥレセール絵

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ジョゼットは、パパの仕事部屋に行きます。電話で人と話しているパパに「でんわで おはなし しているの?」と聞くと「これは でんわじゃない」「これはチーズというんだよ。」とパパ。

 

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壁はドアで、椅子は窓、枕はパン、足は耳。そこでジョゼットはパパに習った通りに話してみます。「わたしは まくらを たべながら いすの そとを みます。わたしは かべを あけて みみで あるきます」 生まれて33ヶ月しか経ってないのに、この反応。ジョゼットは天才だな。

 

ストーリーナンバー4までありますが、私はこの2冊しか読んでません。あとの2冊は絵が別の人だし、内容もいまいちみたいなので、無理して買うことないかな。というか古書価格が高騰していて、とうてい手が出ません。

 

2−1「へんな どうつぶ」

 ワンダ・ガーグ文/絵 わたなべ しげお訳

 

山奥に住んでいるやさしいボボおじさんは、鳥や動物のためにいつも美味しい食べ物を用意していました。ある日、みたことのない動物がやってきて、「あんたは なんちゅう どうぶつだい?」と聞くボボおじさんに、「ぼか どうぶつじゃない。ぼか どうつぶ!」と答えます。このへんなどうつぶの好きな食べ物は「こどもたちの にんぎょう」。ボボおじさんは、人形を食べられた子供のことを思って泣いてしまいます。なんとか、このどうつぶに違うものを食べさせようと考えたおじさんは……。

 

「とても  うまいぞ  じゃむ・じるは。」というどうつぶのセリフが忘れられなくなります。しかし、ボボおじさんが作った「じゃむ・じる」ってなんだろう。作中のレシピ?を見た感じでは全然美味しくなさそうなんですが。

 

2−2「なんにも ないない」

 ワンダ・ガァグ作/絵 むらなか りえ訳

なんにもないない

なんにもないない

Amazon
 
 

 

古ぼけた農場の片隅に3匹の捨て犬兄弟が住んでいました。そのうちの1匹は姿がない犬でした。「のっぽでない/ちびでない/なんてことない、/なんにもない/だから名まえも ” なんにもないない" 」「なんにもないない」は、姿がなくても楽しく暮らしていました。ところがある日、女の子と男の子がやってきて、姿が見える他の2匹を連れて行ってしまいます。あとを追いかけた「ないない」ですが、途中ではぐれてしまいました。困った「ないない」に、からすが「ありやなしやのじゅつ」によって、姿を手に入れることができると教えてくれたので……。

 

「ありやなしやのじゅつ」の呪文は「てんてこまいまい ぐるぐるまいまい」。可愛い!(追記:現在、新訳版が好学社から出ていました。「てんてこまいまい〜」はどう訳されているんだろう)

 

3「パナマって すてきだな」

 ヤーノシュ作/絵 矢川澄子

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(これも絶版。シリーズの別の話は徳間書店から石川素子訳で出ています。)

 

仲良く暮らす「ちびとら」と「ちびくま」がいました。ある日、川上から空き箱が流れてきます。バナナの匂いがするその箱には「パナマ」と書いてありました。ふたりは、今住んでいるところよりずっとすばらしい、あこがれの国パナマを目指して出発します。

 

結末いっちゃうと、旅の最後は自分たちが住んでた家に戻ってきます。でも「やっぱり自分ちが一番」というオチではありません。とにかく2匹がかわいくて笑えます。ただ、「ちびくまくんばっか、がんばってない?」と思ってしまう。下記の頁に「ぼく、上から もちあげるから。」って台詞あるけど、乗っかってるだけだよね?

 

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この作品は「ま、いいか」で終わる程度ですが、シリーズの他の作品を読むと、ちびとらくんのわがままに若干イラッとします。矢川澄子澁澤龍彦の関係と重なるような。

 

「あおくんときいろちゃん」

 レオ・レオニ

 

あおくんときいろちゃんは大の仲良し。ある日、きいろちゃんと遊びたくなったあおくんは、あちこち探し回ってやっときいろちゃんを見つけます。うれしくなり抱き合って喜ぶうちに、ふたりはみどりになってしまいました。家に帰ると、あおくんもきいろちゃんも「うちの子じゃない」と言われて泣いてしまいますが……。

 

作者が孫のために作った絵本だそうです。丸くちぎっただけの色紙なのに、読んでいるうちにあおくんときいろちゃんが可愛らしく見えてきます。

 

5「すてきな三にんぐみ

 トミー・アンゲラー

 

黒い帽子に黒マントの三にんぐみはこわい泥棒。ある日、襲った馬車に乗っていたみなしごの女の子をさらって隠れ家へ連れてきます。ためこんだ金銀財宝を見た女の子は「これどうするの?」三にんぐみは顔を見合わせます。どうするかなんて考えてなかったから。そして彼らが思いついたのは……。

 

私の子供の頃からの愛読書です。アンゲラーの話はどこかシニカルだけどハッピーエンドが多いです。『ゼラルダと人喰い鬼』は、読み終えた直後に息子が「すごくめでたい話だったね〜!」と言ったのが思い出深いです。裏表紙を見るとちょっとブラックなんですけどね。子供には読んでないけど『こうもりのルーファスくん』も好き。

 

 

6−1「ムッシュ・ムニエルを ごしょうかいします」 

 佐々木マキ

 

ムッシュ・ムニエルはやぎですが、ふつうのやぎとはちょっと違って魔術師なのです。仕事が忙しいので、子供を1人さらって弟子にしようと思います。小さな瓶を取り出して魔法をかけ、その瓶にうまく少年を閉じ込めたと思ったのですが……。

 

ムッシュ・ムニエルのサーカス」「ムッシュ・ムニエルとおつきさま」と合本になったものを持っています。(今は3冊に分かれて出版されています)なんでヤギなのか、なんで魔術師なのかよく分からない。ストーリーもあるようでないような。でも、佐々木マキのカラフルな絵で描かれる不思議な世界がとても好き。

 

6−2「やっぱり おおかみ」

 佐々木マキ

 

ひとりぼっちのおおかみの子供が、仲間を探して街をうろつく話。俺に似た子はいないかなと思いながら歩き回り、でも、見つからない。おおかみが吐く「けっ」というセリフ、ふきだしの大きな文字が印象的。最後までひとりぼっちなんだけど、どこか清々しい。若い頃、まるで自分のことのように思えて、何度も何度も読んだっけ。

 

7「こえどまつり」

 大道あや

 

ネコのごんごんは、イヌのちのび、カラスのあーよを連れて小江戸祭りを見に出かけました。屋台が立ち並び人々で賑わう町。笛と太鼓が鳴りわたる中、稚児さんが山車を曳きます。あーよは稚児さんの花笠をくわえて飛んでいってしまい……。

 

何の説明もなく、まるで人間が普通にお祭りに行くように、猫や犬、カラスが登場します。大道あやは60歳から絵を描き始め、たくさんの作品を残しました。絵本もいくつか出版されています。作品展に行った時、ドクダミが一面に咲く中に猫が顔を出している絵が気に入って絵葉書を買って帰りました。「原爆の図」で有名な丸木位里の妹です。

 

8「つきよ」

 長新太

 

「へんてこ絵本」の第一人者、長新太の絵本。うちの子が幼い頃は、「へんてこライオン」シリーズが人気でした。もちろん全巻買いました。2005年に亡くなり、もう新作を読むことはできません。寂しい。長新太さんの絵本は、説明っぽさがなく、余白や詩情を感じるものが多いです。「つきよ」はその代表作。

 

9「トリゴラス」

 長谷川集平作

 

真夜中に「びゅわんびゅわん」いうのは怪獣トリゴラスがやってきてるからや。そう父親に訴えても「あほかいな」と一顧だにされない。そうしているうちにもトリゴラスは近づいてきて、街を破壊し「かおるちゃん」をさらおうとして……。アホな男の子の妄想を絵本にしたような作品。なんとも愛おしい。でも、小学校でこの絵本を読んだ時、聞いてる子たちは呆然としてみえました。

 

10 「くいしんぼうのあおむしくん」

 槇ひろし作

 

ある日、まさおの帽子についていたのは、なんでも食べる青虫。最初は紙屑やゴミを食べていたからよかったのですが、そのうち家や船、まさおのパパやママまで食べてしまいます。何もかも食い尽くし、とうとう最後にはまさおまで。あおむしくんのお腹の中でまさおが見たものは……。

 

10代の頃に読んだ絵本。母が趣味で定期購読していた「こどものとも」の一冊だと思います。子供たちに見せたことがあるか覚えてません。内容は何回も話したけど。いつの間にかハードカバー版が出ていました。似たような話は多いです。思いつくまま挙げてみました。↓

 

 

 

 

 

 

こういうへんな絵本ばかりを集めているわけではなく、昔話や、長く読み継がれているロングセラー絵本も一緒に読んだはずなのですが。子供にとっては、へんな絵本の方が記憶に残るのかもしれません。

 

「ストーリーナンバー」を2冊、佐々木マキも2冊入れてしまったのはバランス悪かったな。これは各々ひとまとめにして、もう2冊挙げようかと思ったけど、とりあえず、今日はこんな感じで。そのうち書き直すかも。(2021.12.13 ワンダ・ガアグも2冊入れてました。そして『なんにもないない』は絶版だけど新訳がでてました。当初の10冊はそのままにして、3冊足しました。)