近所のブックオフに寄った。長いこと読書の習慣を失っていたので、読んだことがない作家の名前が増えた。知らない作家の本を買ってみようと思ってページをめくってみても、なんとなく気が乗らない。結局、昔読んだ杉浦日向子のエッセイ本を買った。
ここ数年、昔読んだ本を読み返すことが多い。読書を楽しんでいるというより、字面を追いながら以前読んだ時の感覚を再体験している感が強い。うまく説明できないけど。
でも、この杉浦日向子のエッセイを読んでいたら、そういう「昔の感情を反芻する」感覚ではなくて、読んでいて楽しい気持ちが戻ってきた。一編の短さや「食」というテーマもよかったのかもしれない。
「食の章、道の章、楽の章、箸休め」と章立てされている。「道の章ー酒器十二ヶ月」は愛用の酒器についてのエッセイで『食彩浪漫』に連載されていたもの。各酒器が冒頭カラー写真で紹介されているのが嬉しい。愛用の着物や小物と一緒に撮影されているのもいい。撮影を担当した写真家は著者の兄だそう。巻末にはその兄による「妹としての杉浦日向子」という小文や全著作リストが収録されている。もっと長生きして欲しかったとしみじみ思う。