小川洋子には、デヴィッド・リンチっぽさを感じてしまう。嫌いではないけれど体調が悪い時には読まないようにしています。
この作品は、表紙のかわいらしさに惹かれて買いました。八つの話が収録された短編集で、どの作品にも動物が出てくるとのこと。帯に「無力で内気で賢明な彼らのための物語」と筆者の言葉が書かれています。ずっと積んだままでしたが、台所のテーブルに置いて、手が空いた時に少しずつ読んで読了しました。
私は冒頭の「帯同馬」が一番好きでした。試食販売の仕事をする女性と、食べるばかりで買わないおばさんの話。ディテールが緻密で、二人の性格や行動が自然に思えてしまう。けっこう変な話なのに。結末も余韻があってよかったです。
他に好きだったのは「ビーバーの小枝」「目隠しされた小鷺」「チーター準備中」の三つ。「ハモニカ兎」は途中までは良い感じだったのに結末が(そりゃないでしょ)と思いました。「愛犬ベネディクト」「断食蝸牛」は設定やストーリーがつまらなかった。前者は現実寄り、後者はファンタジー寄りの話ですが、こじんまりまとめた感が強かったです。展開を工夫するか、独特な世界を緻密に描くことに専念するかしたほうがおもしろかったのでは。
最後の「竜の子幼稚園」は、小川洋子らしい不思議な話で、テイストは好きなんですが、肝心の「身代わりガラス」がいまいちイメージできなくて物語の世界に入れなかったのが残念です。
帯には「この世界が素晴らしいのは 動物たちがいるからーー震えるような感動を呼び起こす連作小説」とありますが、八つの作品は独立していて、直接的なつながりはありません。正直、「震えるような感動」はなかったです。ただ、どの作品にも、欠けたものを愛おしむ、かなしみのようなものを感じました。
単行本の書影はでてきませんでした。手元の本を確かめると
装画D[di:」
と買いてありました。