元活字中毒主婦の身辺雑記

日常の細々したことなど。

「きみはいくさに征ったけど」という劇を観に行った

知人が「子供劇場」という活動をしていて、賛助会員になっている。賛助会員は、年会費3,000円で一度だけ観劇できる。大体年一度はコンサートなので例年それに行っているが、今年は行きそびれた。カンパのつもりだし、他に特別観たい劇もなかったけど、知人がぜひどれか観に行って欲しいというので、直近の公演を選んだ。

 

「君はいくさに征ったけど」という劇。(戦争ものか〜)と気が進まないままノルマ気分で行ったら、高校生のいじめ問題が絡んだもので(より苦手なやつ)とげっそりしたが、意外と良かった。劇場という空間に居ること自体も楽しかったし。

 

何より竹内浩三という詩人を知ることができてよかった。帰宅後、検索していくつか詩を読んだ。会場で売っていた詩集を買って帰れば良かった、と後悔した。

 

学徒出陣で出征しフィリピンで生死不明になった人。映画監督になるのが夢だったそうだ。劇中朗読された詩。

 

「ぼくもいくさに征くのだけれど」


街はいくさがたりであふれ
どこへいっても征くはなし 勝ったはなし
三ヶ月もたてばぼくも征くのだけれど
だけど こうしてぼんやりしている

 

ぼくがいくさに征ったなら
一体ぼくはなにするだろう てがらたてるかな

 

だれもかれもおとこならみんな征く
ぼくも征くのだけれど 征くのだけれど

 

なんにもできず
蝶をとったり 子供とあそんだり
うっかりしていて戦死するかしら

そんなまぬけなぼくなので
どうか人なみにいくさができますよう
成田山に願かけた

 

帰宅後、検索して読んだ詩。

 

「冬に死す」


蛾が
静かに障子の桟からおちたよ
死んだんだね

 

なにもしなかったぼくは
こうして
なにもせずに
死んでゆくよ
ひとりで
生殖もしなかったの
寒くってね

 

なんにもしたくなかったの
死んでゆくよ
ひとりで

 

なんにもしなかったから
ひとは すぐぼくのことを
忘れてしまうだろう
いいの ぼくは
死んでゆくよ
ひとりで

 

こごえた蛾みたいに

 

竹内浩三楽書き詩集―まんがのよろづや

竹内浩三楽書き詩集―まんがのよろづや

  • 発売日: 2005/07/01
  • メディア: 単行本
 

 

公演会場で売られていた本。

 

彼の詩は上の二篇を含め、青空文庫でもいくつか読めます。

作家別作品リスト:竹内 浩三