ゴールデンウィーク中に読もうと思って図書館で何冊も本を借り、借りられなかった本はリクエストを出してきた。多くのリクエスト本は休み中には間に合わず、今ようやく手元にきている。その中の2冊。
対談相手(中野翠・芹川藍・ミヤコ蝶々・氷室冴子・北村道子・黒澤亜里子)が豪華なので読んでみる気になった。30年近く前、ちょうどアグネス論争が話題になっていた頃の本だ。最後の黒澤亜里子以外は、フェミニズムに興味がない人ばかり。小倉千加子は、相手の話を聞き出そうと遠慮をしている面もあるのだろうが、かなり押され気味だ。読んでいて、どうしても対談相手の方に共感してしまう。例えば中野翠の下記のような発言。
現実の世の中や人の気持って、もっと微妙で陰影のあるものじゃない。そういうわけの分かんない、すぐには言葉にできない部分に、私はわりと目がいっちゃうけれども、フェミニストはあまりそういうものを見ようとしないし、大きな枠でバッと囲って、それですましちゃってる感じがして。(本文P.16~17)
または、氷室冴子が、ある論争に関して上野千鶴子を批判する箇所。
そこには個人的な共感性とか、個別な個人の感受性を無視した効果とか効率とかを第一目的に持ってくる発想があるわけです。そういうベクトルで動くのはまさにフェミニストが批判している男社会のやり方ですよね。自分たちもそういうやり方を持つことでそのやり方の強引さをあばいてみせようという、とても政治的な方法論だと思うんですけれど、そうすることで踏みつぶしていくいくつかの小さな問題がありますよね。でも、人間が生きていくってことは、そういった小さな問題の積み重ねなんです。(本文P.164~165)
もちろん、フェミニスト全員にこの批判が当てはまるとは思っていない。でも、フェミニズムという思想とその手法のギャップに違和感を感じることは今でも多い。この対談に選ばれた人々は、「個人的な共感性や個別な個人の感受性」を大切にして生きている人々で、そのゆえに著者からは彼らがフェミニストに見えるのかもしれない。それなのに、小倉千加子が「フェミニズム」を背負って話せば話すほど、相手と話が噛み合わず議論が空回りするのが皮肉に思えた。芹川藍から「(小倉千加子がフェミニズムをやっているのは)うーんとね、ヒマつぶしのような気がするの。」と言われた著者は、今は認定こども園の園長だ。小倉千加子にとってフェミニズムとは何だったのだろう。この本以降の考えの変化が知りたい気もするが、そのために本を読むほどの興味は湧かない。
女一生の働き方―貧乏ばあさん(BB)から働くハッピーばあさん(HB)へ
- 作者: 樋口恵子
- 出版社/メーカー: 海竜社
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 単行本
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「日本の女性の働き方は、社会保障につながりにくく、老後「貧乏ばあさん」になることが多い。本書では、貧乏ばあさん=「BB」から、働くハッピーばあさん=HBになるための方法や実例を多数紹介する」(内容紹介より)
女性が働く上での問題点を豊富な資料で分かりやすく解説したうえで、その中で生き抜いてきた人々の事例を紹介している。ちなみに、この本で使われた資料の多くは樋口恵子氏が理事長をしている NPO法人高齢社会をよくする女性の会(WABAS)の協力によるものだそうだ。特に目新しい方法が書いてあるわけではないが、資料がしっかりしているし、実例として紹介された全員の生き方が肯定的に書かれているので、すっきりした読後感。著者の元気で前向きな姿勢が伝わってきて、こっちも元気がでてくる本だった。樋口恵子もフェミニズムの人だと思うが、こんなふうに、地道にデータを積み重ね、多くの人にインタビューをした上で作られた本だと共感できる。