知っている古本屋の前を通ったら、暗い店内の奥の方に電灯の明かりが見えた。開いてるのかな、閉まってるのかな、とドアを押したら開いたので中に入った。
ここへ来るのは数年振りだ。並んでいる本にあまり変化がないように思える。というか本棚に空きが目立つ。売ったあと補充がされてない感じ。ぐるっと店内を回って、武田花の写真集『猫・陽のあたる場所』を手に取り、そこだけ少し明るいレジに向かった。
「おひさしぶりです」と声をかけると、初めて客が来ていたのに気づいたようで、「あ、ほんとに。これは。おひさしぶりです」と言いながら、店主が店内の電気を点けた。髪がすっかり白くなっていた。もう交換会(古書市)へは行っていないそうだ。雑談の中で、珍竹林によったら古物が多くてびっくりした話をすると「うちも似たようなもの。ついでにこれも処分してって言われて引き取ることが多いんですよ」といっていた。そのわりに古物が増えた感じはしなかった。
しばらく話して、「久しぶりだから100円ひいときます」ということで700円払って外に出た。
私は一時、古本屋のまねごとをしていて、その頃、ちょくちょく寄っていた店だ。当時は、お手製の子供用椅子や和紙で作ったかご、デッドストックの小さな置物などが店内のあちこちに並んでいて、それを買ったりもした。交換会での話を聞くのもおもしろかった。
今は、失礼ながら、このまま在庫を売り切ったら終わりにするのか、という雰囲気で、さびしかった。私より年上の方だから、店番を口実?に、のんびりされているのかもしれないが。
猫のいる風景がいい感じ。もう今はない街並みなんだろうな。
店主の本。
店主のお母様の本。
↑この二冊の本の話、なんとなく、ご本人を目の前にすると話しづらい。
*追記*
知らないうちに、もう一冊出版されてました。読まなくちゃ。